会社で情報漏洩を起こしてしまったら?クビになるのか|懲戒処分と損害賠償の考え方、まず報告する理由、相談先
- 18分で読める
- 一次資料21件
- セキュリティ図鑑編集部
懲戒と解雇の歯止め
合理的な理由と相当性を欠けば無効1976年の最高裁の事件での賠償の限度
交通事故の事件。一律の基準ではない会社の速報の目安
部署の従業者が知った時点から動きうる総合労働相談コーナー
予約不要。面談か電話で相談SUMMARY
要点をまとめると
- 01
情報漏洩を起こしても、必ずクビになるとは法律で決まっていません。
- 02
懲戒も解雇も、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠けば無効です(労働契約法15条・16条)。
- 03
賠償は全額とは限らず、給料からの一方的な天引きは原則禁止です。
そもそも懲戒権の濫用とは?
会社に懲戒の権限があっても、理由や重さに無理がある処分は、権利の使いすぎとして無効になる、という考え方です。
たとえるなら校則があっても、小さな違反でいきなり退学にはできない、というイメージに近いものです。
- 1根拠があるか就業規則に定めと周知
- 2理由があるか客観的に合理的な理由
- 3重すぎないか社会通念上の相当性
労働契約法第15条と厚生労働省の資料をもとに、やさしく言い換えています。
この記事をスライドで理解する(6枚)
1 / 6宛先を間違えて、お客様の名簿をメールで送ってしまった。顧客データの入ったUSBメモリが見つからない。社内で「情報漏洩」と騒ぎになり、原因が自分だと分かった。頭が真っ白になり、「クビになるのか」「賠償金を払えと言われるのか」と考えてしまう。そんな状況の方に向けて、法律の考え方と、今やることをまとめました。
中身は、e-Gov法令検索の条文(労働契約法、民法、労働基準法、個人情報保護法、不正競争防止法)、厚生労働省の資料、国家サイバー統括室のハンドブック、裁判所の公式サイトで読める判決を、2026年11月1日時点で確かめたものです。この記事は一般的な説明で、あなたの件がどうなるかを判断するものではありません。個別の判断は、弁護士や労働相談の窓口に確かめてください。
01この記事でわかること(3行まとめ)
理由と相当性を欠く処分は無効
信義則で限度がある。天引きも原則不可
隠すと被害も立場も悪くなりやすい
- 漏洩を起こしたら必ずクビになる、という決まりはありません。懲戒も解雇も、合理的な理由と社会通念上の相当性を欠けば無効になると法律に書かれています。結果は事情によって変わります。
- 損害賠償を求められる可能性はありますが、全額とは限りません。最高裁は、会社が請求できる範囲を「信義則上相当と認められる限度」としています。給料から一方的に天引きすることは原則として認められません。
- 今いちばん大事なのは、すぐ報告することです。隠すと被害が広がり、会社の法律上の期限にも響きます。わざと持ち出した場合は、話がまったく別になります。
02情報漏洩を起こしたらクビになる?法律の考え方
漏洩を起こしたら、もう絶対クビだよね……?
絶対とは言えません。法律は、合理的な理由と社会通念上の相当性を欠く解雇や懲戒を無効としています。結果は事情によるので、個別の判断は専門家に確かめましょう。
会社を辞めさせる処分には、ふつうの解雇と、制裁としての懲戒解雇があります。どちらにも法律の歯止めがあります。条文は次のとおりです(e-Gov法令検索で確かめました)。
| 条文 | 内容(原文) |
|---|---|
| 労働契約法 第15条(懲戒) | 使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。 |
| 労働契約法 第16条(解雇) | 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。 |
つまり、会社が「漏洩したからクビ」と決めれば必ず有効になる、というものではありません。逆に、法律が「漏洩では解雇できない」と決めているわけでもありません。厚生労働省の資料(中央労働委員会の事例)は、懲戒解雇には第15条と第16条の両方が適用されるとしたうえで、次の順で考えるとしています。
- 懲戒できる根拠があるか。具体的な懲戒の理由と処分を定めた就業規則の規定が必要です。
- 客観的に合理的な理由があるか。その行為が懲戒解雇の理由に当たるかが問われます。
- いちばん重い懲戒解雇にするのが社会通念上相当か。罪と罰のつり合い、ほかの従業員との平等な扱い、就業規則の手続きを守ったか、本人に弁明の機会を与えたか、などの面から判断されます。
就業規則については、最高裁の判決(2003年10月10日)が、懲戒にはあらかじめ就業規則で懲戒の種別と事由を定めておくことが必要で、拘束力を持つには適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続きが必要だとしています。
労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する会社に就業規則の作成と届け出を義務づけ、制裁の定めをする場合はその種類と程度も書くよう求めています。一方で、厚生労働省の「知って役立つ労働法」が説明するとおり、就業規則に書けば自由に懲戒できるわけではありません。就業規則が見当たらない、見せてもらえないという場合は、その事実をメモして相談窓口に伝えてください。
03懲戒処分にはどんな種類がある?
懲戒はクビだけではありません。厚生労働省の相談センターの解説は、就業規則で制度化されている例として次のものを挙げています。名前や段階は会社ごとに違うので、自社の就業規則を見てください。
| 処分の例 | どんなものか |
|---|---|
| 戒告・訓告・譴責(けんせき) | 注意を与える処分。始末書を求められる場合もある |
| 減給 | 給料を減らす処分。労働基準法第91条に上限がある |
| 出勤停止 | 一定の期間、出勤させない処分 |
| 諭旨解雇 | 退職を勧告し、応じなければ懲戒解雇することを前提とする処分 |
| 懲戒解雇 | 制裁として一方的に辞めさせる処分 |
減給の上限は、労働基準法第91条で決まっています。1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならず、総額が1回の給料の総額の10分の1を超えてはなりません。
国家サイバー統括室の「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック」Ver.3.0のQ28は、顛末書(事実の報告や状況説明の書類)と始末書を分けて説明しています。事実の報告を求めるのは業務命令の範囲内と考えられる一方、謝罪の言葉を求める文書は懲戒の一種としての始末書に当たると考えられ、就業規則の規定が必要とされています。「書いてください」と言われたら、どちらの趣旨かを聞いてみてください。
04処分の重さを左右する事情
ルール違反と事故の結びつき
中身と人数、広がり
職種や地位で求められる意識
ふだんのルールの徹底
同じ事案の会社の扱い
同じ「漏洩」でも、中身はさまざまです。第15条が「行為の性質及び態様その他の事情」と書いているのは、そのためです。ハンドブックのQ28は、サイバーセキュリティのルール違反で懲戒を考えるときの事情として、次のものを挙げています。
- ルール違反がインシデント(事故)を起こす可能性の高さ
- 想定されるインシデントの重大さ
- 従業員の職種や地位(セキュリティに特に高い意識が求められる立場か)
- ふだんのルールの周知や徹底のあり方
- 過去の同じような事案での会社の対応
同じQ28は、処分が根拠の行為の重大さに比べて重すぎないか、ほかの同種の事案の扱いとつり合いがとれているか、といった点が問題になるとしています。公刊された裁判例で実務の指針になるものは必ずしも多くないとも書かれています。
次の表は、これらをもとに当サイトが整理した「見られそうな点」です。結論を示すものではありません。
| 場面の例 | 確かめられそうな点 |
|---|---|
| メールの誤送信 | 確認の手順は決まっていたか。中身は何か。何人分か |
| USBメモリやパソコンの紛失 | 持ち出しは許可されていたか。暗号化していたか。すぐ報告したか |
| 詐欺メールを開いて感染 | 訓練やルールはあったか。気づいてどう動いたか |
| 禁止されたツールやクラウドの利用 | 禁止は周知されていたか。注意を受けていたか。繰り返していたか |
メールを開いてしまった直後の動きは変なメールを開いてしまったときの記事にあります。
05損害賠償は請求される?全額払うの?
会社の損害を全部私が払うことになるの?
全額とは限りません。最高裁は損害の公平な分担という見地から、信義則上相当な限度としています。金額を言われたら、すぐ払わず弁護士に相談を。
懲戒とは別に、お金の話があります。会社は、従業員の行為で損害を受けたとき、債務不履行(民法第415条)や不法行為(民法第709条)を根拠に賠償を求める可能性があります。厚生労働省の「確かめよう労働条件」のQ&Aも、故意または過失があり損害との間に相当の因果関係があれば、実際の損害の全部または一部について賠償責任が生じることがあるとしています。
ただし、全部の場合に請求できるわけではなく、認められる場合でも信義則上、範囲が限定されることがある、と同じQ&Aは説明しています。その根拠になる最高裁の判決が2つあります。どちらも裁判所の公式サイトで読めますが、情報漏洩ではなく交通事故の事件です。
| 判決 | 内容 |
|---|---|
| 最高裁 1976年7月8日 | 使用者は、事業の性格、規模、施設の状況、被用者の業務の内容、労働条件、勤務態度、加害行為の態様、加害行為の予防や損失の分散についての配慮の程度などの事情に照らし、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度で、賠償や求償を請求できるとした。その事件では損害額の4分の1が限度とされた |
| 最高裁 2020年2月28日 | 被用者が事業の執行について第三者に損害を加えて賠償した場合、諸般の事情に照らし、損害の公平な分担という見地から相当と認められる額を使用者に求償できるとした |
1976年の事件の4分の1は、その事件の事情での結論です。車の保険に入っていなかった、臨時の乗務だった、勤務成績は普通以上だった、といった事情が見られています。「漏洩でも4分の1で済む」という意味ではありません。わざとやったのか不注意か、会社がどう備えていたかで見方は変わりえます。金額を言われたら、弁護士に相談してください。
2020年の判決は、お客様など被害者に直接賠償した従業員が、会社に負担を求められる場合があることを示したものです。民法第715条は、従業員が事業の中で第三者に与えた損害を会社も賠償すると決めています(同条第3項で、会社から従業員への求償も妨げないとしています)。漏洩された本人から請求が来た場合に会社と個人の負担がどう分かれるかは、事案によります。
06給料からの天引きと、書類へのサインに注意
「賠償金は給料から引いておく」「違反1回でいくら」と言われたら、次の条文を思い出してください。厚生労働省のQ&Aで確かめた内容です。
- 賠償額を前もって決めることの禁止(労働基準法第16条):労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定したりする契約をしてはなりません。会社は、実際に損害を受けた場合に、その事実を証明して請求できるにとどまります。
- 賃金の全額払い(労働基準法第24条):賠償金などを給料から一方的に差し引くことは、原則として禁じられています。賠償責任がある場合でも、天引きが許されるものではないと同じQ&Aは説明しています。
注意したいのは合意です。同じQ&Aは、労働者の完全な自由意思による相殺の合意なら、全額払いの原則によって禁止されるものではないとした裁判例を紹介しています。つまり、サインすると話が変わることがあります。「賠償額に同意する」「退職に同意する」といった書類を出されたら、その場で署名せず、持ち帰って相談したいと伝えてください。これは当サイトからの助言で、法律が決めている手順ではありません。
07起こしたらやること:まず報告する
上司や社内の窓口へ
端末をネットから切り離す
メールやデータを残す
いつ、何を、誰に
- 上司や社内の窓口にすぐ知らせる。「確定してから」と待たないでください。分かっていることと、分かっていないことを分けて伝えます。
- 被害を広げない。感染が疑われるなら、LANケーブルを抜く、無線を切るなどして端末をネットワークから切り離します(個人情報保護委員会Q&A Q6-5の例)。
- 何も消さない。送ったメールや端末のデータを、自分の判断で消さないでください。原因の調査に必要になります。
- 事実をメモする。いつ、何を、誰に、どうしたか。気づいた時刻。紛失なら最後に確認した場所です。
- 指示に従い、勝手に連絡しない。相手や外部への連絡は、会社の判断を確かめてから行います。誤送信の相手への削除依頼も同じです。
すぐ報告が必要な理由は、会社に法律上の期限があるからです。個人情報保護法第26条で報告の対象になる漏えいでは、会社は個人情報保護委員会に報告します。速報の目安は、知ってからおおむね3〜5日以内です。
そしてこの「知った」時点は、社長が聞いた日ではありません。個人情報保護委員会のQ&A(Q6-24)は、個別の事案ごとに判断されるとしたうえで、部署内のある従業者が知った時点で「部署が知った」と考えられるとしています。あなたが気づいた時点で、会社の期限が動き始めている可能性があるということです。会社の手順は会社がやることをまとめた記事にあります。
社内の調査にも協力することになります。ハンドブックのQ28は、インシデントの解明に必要かつ合理的な範囲の調査には、従業員が協力する義務を負うと考えられるとしています。
08報告のしかた:何をどう伝えるか
怖くて言葉が出ないときは、次の形をそのまま使ってください。当サイトで作った例です。うまく話そうとしなくて大丈夫です。
- 最初の一言:「情報漏えいにつながるかもしれない件で、すぐ報告させてください」
- 何が起きたか:「今日の10時ごろ、A社宛のメールに、誤ってお客様一覧のファイルを添付して送りました」
- 中身と人数:「氏名とメールアドレスが約300人分です。パスワードの設定はしていません」
- 今の状態:「相手にはまだ連絡していません。メールもファイルも消していません」
- 分からないこと:「相手が開いたかどうかは分かりません」
- お願い:「次に何をすればいいか指示をください」
原因の分析や言い訳は、後の聞き取りで話せます。最初の報告で大事なのは、早さと事実です。個人情報保護委員会の報告の項目にも、発生日、発覚日、発見者、事実の経過などがあるので、これらが分かれば会社の手続きを助けます。上司に言いにくい事情があるなら、情報システム部門、総務、コンプライアンスの窓口など、社内で決められた別の窓口でもかまいません。
09隠すことのリスク
黙っていれば、ばれないかも……。
おすすめしません。被害が広がり、会社の報告の期限にも響きます。隠したこと自体が不利に見られるおそれもあります。怖くても早く伝えましょう。
- 被害が広がる。報告が遅れれば、パスワードの変更や端末の切り離し、お客様への連絡も遅れます。
- 会社が義務を果たせなくなる。個人情報保護委員会の令和7年度年次報告は、報告連絡の体制が適切でなく第26条の報告が著しく遅れた事案などに、指導を行ったと書いています。
- 自分の立場が悪くなるおそれがある。第15条は「その他の事情」も見るとしています。隠した、嘘をついた、証拠を消したという行動が、不利な事情として見られるおそれがあります。これは条文からの当サイトの見方で、裁判例で確かめたものではありません。
- 労働契約上の義務に触れるおそれがある。労働契約法第3条第4項は、労働者と使用者は信義に従い誠実に義務を履行しなければならないとしています。
漏えいは珍しい出来事ではありません。個人情報保護委員会の令和7年度年次報告によると、処理した個人データの漏えい等の報告は17,139件で、1件あたりの人数は1,000人以下が93.6%、発生原因には書類の誤交付やクレジットカードなどの誤送付が多く挙がっています。多くの職場で、人の手のミスは現に起きています。
怖いのは当然です。それでも、不注意のミスと、それを隠したことは別の問題です。隠すことで後者が加わります。早く話したほうが、被害も、自分の立場を説明する材料も、良い方向に働きやすいと考えてください。
10わざと持ち出したら、話は別:不正競争防止法と個人情報保護法
ここまでは主に不注意のミスの話です。わざと持ち出した、売った、転職先に渡したという場合は、懲戒や賠償だけでなく、犯罪になることがあります。
| 法律 | 対象になる行為(要旨) | 罰則 |
|---|---|---|
| 個人情報保護法 第179条 | 業務で扱った個人情報データベース等を、自己や第三者の不正な利益を図る目的で提供し、または盗用した(従業者だった人も含む) | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。会社にも1億円以下の罰金がありうる(第184条) |
| 不正競争防止法 第21条 | 不正の利益を得る目的や保有者に損害を加える目的で、営業秘密を不正に取得・使用・開示するなど | 10年以下の拘禁刑もしくは2,000万円以下の罰金、またはその両方(同条第1項・第2項) |
個人情報保護法は2026年7月17日に改正法が公布され、不正提供の罪について、加害目的の提供も処罰の対象にし、法定刑を引き上げることになっています。施行は原則として公布から2年以内で、政令で定める日です。上の表は2026年11月1日時点でe-Govに載っている条文です。詐欺などで個人情報を不正に取得する行為に対する罰則も新しく設けられます。
営業秘密を不正に扱えば、不正競争防止法第4条の損害賠償の対象にもなります。ハンドブックのQ63は、営業秘密の漏えいでは巨額の損害を招くことが想定されるとしています。
「持ち出してしまったけれど悪用するつもりはなかった」「家で仕事をするために入れた」という場合に、どの条文に当たるかは目的や事情によって判断されます。ここでは判断できません。すぐ弁護士に相談してください。
営業秘密の持ち出しは、Q28でも懲戒や賠償が問題になる場面の中心として書かれています。Q&A(Q6-24)でも、従業者の不正な持ち出しの場合は、持ち出した本人を除いて会社が「知った」時点を判断するとされていて、ふつうのミスとは扱いが分かれています。
11賠償を請求されたときの確認
- 根拠を書面で求める。どの行為を理由に、どの法律や契約に基づいて、いくら請求するのかを確かめます。
- 損害の内訳を求める。厚生労働省のQ&Aは、会社は実際に損害を受けた事実を証明して請求できるにとどまるとしています。調査費、コールセンター費用など、何にいくらかかったのかを聞きます。
- 因果関係を考える。自分の行為と損害の間に相当の因果関係があるかが問われます。不正アクセスや委託先の問題など、ほかの原因が重なっていないかも見ます。
- 会社の備えを整理する。1976年の判決は、損失の分散についての会社の配慮の程度も事情に挙げています。その事件では保険の未加入が見られました。ルール、教育、保険の状況を、分かる範囲でメモしておきます。
- 期限や分割の話に、その場で応じない。弁護士に相談してから返事をすると伝えます。これは当サイトからの助言です。
請求の話が出ていない段階で、こちらから「全部払います」と言う必要はありません。謝ることと、法的な責任の額を認めることは別だと考えてください。
12処分を告げられたときの確認
- 就業規則を見る。どの条文の懲戒事由に当たるとされているか。就業規則は周知されているか。
- 処分の理由を具体的に聞く。いつのどの行為が理由なのかを、できれば書面で確かめます。
- 弁明の機会を求める。自分の言い分を伝える機会です。厚生労働省の資料は、手続きの面も相当性の判断材料に挙げています。
- 解雇なら理由の証明書を請求する。労働基準法第22条は、解雇の予告から退職の日までの間や退職の場合に、労働者が請求すれば解雇の理由についての証明書を遅滞なく交付しなければならないとしています。
- 退職金の規定を見る。厚生労働省の資料は、懲戒解雇などの場合の減額や不支給を定めることは認められるとされつつ、規定を限定的に解釈し、一定の割合の支払いが認められる場合があるとしています。
- 記録を残す。言われた内容、日時、相手をメモし、受け取った書類を保管します。
解雇の予告(労働基準法第20条)には、30日前の予告または30日分以上の平均賃金の支払いという原則があります。ただし労働者の責めに帰すべき事由に基づく解雇などには例外があります。実際に当たるかどうかは相談先に確かめてください。
13同じことを繰り返さないために
処分がどうなるにしても、再発防止を一緒に考える姿勢は無駄になりません。ハンドブックのQ28も、発見されたルール違反にはまず注意を与えて是正を促す考え方を示しています。職場で使える仕組みとしては、次のようなものがあります。
- 誤送信には、送信前の確認やメールセキュリティのサービスの機能
- 持ち出しには、データを減らすことと暗号化
- 入口の守りには、多要素認証やソフトの更新
- 職場のルールには、社内ルールのページや教育・訓練のサービス
情報漏えいの全体像は情報漏えいの悩みのページと用語ページにあります。
14困ったときの相談先
無料・予約不要
0120-811-610
0570-078374
処分や金額を言われたら
- 総合労働相談コーナー(厚生労働省):都道府県労働局や全国の労働基準監督署などに設置されています。解雇を含むあらゆる分野の労働問題について、専門の相談員が面談または電話で対応します。予約不要、無料です。
- 労働条件相談ほっとライン(厚生労働省委託):0120-811-610。平日17時〜22時、土日祝日9時〜21時です。
- 個別労働紛争解決制度(都道府県労働局):総合労働相談コーナーから案内される無料の制度です。労働局長の「助言・指導」や、紛争調整委員会の「あっせん」があります。どちらも強制力のある判断ではないので、応じるかどうかは当事者が決めます。
- 法テラス・サポートダイヤル:0570-078374。平日9時〜21時、土曜9時〜17時。問い合わせの内容に合った窓口を案内します。無料の法律相談や弁護士費用の立替の制度もあります。使えるかどうかの条件は法テラスに確かめてください。
- 弁護士:処分や賠償の金額を具体的に言われた、書類への署名を求められた、持ち出しを問われている、といった場合は早めに相談してください。
15よくある質問
Q1回のミスでも懲戒解雇はありえますか?
法律に「1回なら解雇できない」という決まりはなく、事情によって判断されます。第15条と第16条の枠組みで、理由と相当性が問われます。自分の場合は相談窓口や弁護士に確かめてください。
Q懲戒解雇だと言われたら、もう争えませんか?
第15条と第16条は、要件を欠く処分を無効としています。有効か無効かは最終的に個別の判断です。処分の理由と就業規則の条文を確かめて、早めに相談してください。
Q損害賠償はいくらくらいになりますか?
情報漏洩で従業員個人が負担した額について、裁判所の公式サイトで確かめられる目安は見つかりませんでした。この記事では金額を示しません。会社から金額を示されたら、根拠を書面で求めて弁護士に相談してください。
Q会社がお客様に払った賠償金を、全部自分に請求されますか?
民法第715条第3項は会社から従業員への求償を妨げないとしていますが、最高裁は1976年の判決で、信義則上相当と認められる限度としています。全額かどうかは事情によります。
Q退職したら責任はなくなりますか?
退職しても、すでに起きた行為について損害賠償を求められる可能性は残ります。個人情報保護法第179条も、従業者であった者を対象に含めています。辞めれば解決するとは考えないでください。
Qアルバイトや派遣でも同じですか?
労働契約法と労働基準法は、働き方の名前ではなく労働者であるかどうかで適用されます。派遣の場合はどの会社とのどの契約が関係するかが複雑になるので、総合労働相談コーナーに相談してください。
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出典(一次資料)21件被害を受けた組織や公的機関の発表だけを出典にしています(2026.11.05に確認)開く
- 1e-Gov法令検索「労働契約法」 ↗laws.e-gov.go.jp
- 2e-Gov法令検索「労働基準法」 ↗laws.e-gov.go.jp
- 3e-Gov法令検索「民法」 ↗laws.e-gov.go.jp
- 4e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」 ↗laws.e-gov.go.jp
- 5e-Gov法令検索「不正競争防止法」 ↗laws.e-gov.go.jp
- 6厚生労働省 中央労働委員会「懲戒解雇の有効性」(調整事例) ↗www.mhlw.go.jp
- 7厚生労働省 中央労働委員会「就業規則違反を理由とする退職金の不支給」(あっせん事例) ↗www.mhlw.go.jp
- 8厚生労働省 確かめよう労働条件「不良品を出すごとに賠償金を賃金控除することは、労基法上許されますか?」 ↗www.check-roudou.mhlw.go.jp
- 9厚生労働省「知って役立つ労働法」 ↗www.mhlw.go.jp
- 10愛知県雇用労働相談センター(厚生労働省)「懲戒」 ↗aichi-elcc.mhlw.go.jp
- 11厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」 ↗www.mhlw.go.jp
- 12厚生労働省 確かめよう労働条件「労働条件相談ほっとライン」 ↗www.check-roudou.mhlw.go.jp
- 13厚生労働省「個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)」 ↗www.mhlw.go.jp
- 14裁判所「最高裁判所第一小法廷 昭和51年7月8日判決(昭和49年(オ)第1073号)」 ↗www.courts.go.jp
- 15裁判所「最高裁判所第二小法廷 令和2年2月28日判決(平成30年(受)第1429号)」 ↗www.courts.go.jp
- 16裁判所「最高裁判所第二小法廷 平成15年10月10日判決(平成13年(受)第1709号)」 ↗www.courts.go.jp
- 17内閣官房国家サイバー統括室「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック Ver.3.0」Q28、Q63 ↗security-portal.cyber.go.jp
- 18
- 19個人情報保護委員会「令和7年度 年次報告」 ↗www.ppc.go.jp
- 20個人情報保護委員会「令和8年 改正個人情報保護法について」 ↗www.ppc.go.jp
- 21日本司法支援センター 法テラス ↗www.houterasu.or.jp

