取引先を名乗るメールで送金してしまった!ビジネスメール詐欺の対処と、お金を取り戻す手順
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- 一次資料19件
- セキュリティ図鑑編集部
送金元の銀行へ組戻しの依頼
IPA・警察庁・警視庁救済法で戻る金額の上限
凍結時の残高。全額とは限らない救済法の手続きにかかる期間
全銀協:権利消滅60日+申請30日以上IPAが紹介する手口の分類
多いのは請求書の偽装と社長のふりSUMMARY
要点をまとめると
- 01
ビジネスメール詐欺は、取引先や社長になりすました偽メールで犯人の口座に振り込ませる詐欺です。
- 02
送金してしまったら、すぐ送金に使った銀行に取り消し・組戻しを頼み、振込先の銀行と警察にも連絡します。
- 03
メールはヘッダごと残し、取引先にはメール以外で確かめます。
そもそもビジネスメール詐欺とは?
取引先や自社の社長になりすました偽のメールで、犯人の口座にお金を振り込ませる詐欺です。
たとえるならいつもの取引先そっくりの封筒で「振込先が変わりました」と届いた手紙が、実は泥棒の書いたものだった、というようなもの。
- 1盗み見るメールから取引や担当者を調べる
- 2なりすます取引先や社長のふりをする
- 3振り込ませる「口座が変わった」と犯人の口座へ
IPA「ビジネスメール詐欺(BEC)対策特設ページ」と警察庁「ビジネスメール詐欺に注意!」の説明をもとに、やさしく言い換えています。
この記事をスライドで理解する(7枚)
1 / 7取引先から「振込先の口座が変わりました」というメールが届き、その口座に代金を振り込んだ。あとで取引先に確かめたら、そんなメールは送っていないと言われた。あるいは、社長の名前で「急ぎの案件なので、この口座に振り込んでほしい。ほかの人には内緒で」と指示され、言われたとおりに送金してしまった。こうしたときに、最初に何をするか、お金を取り戻せる見込みはどのくらいあるかを、順番にまとめました。
中身は、IPA(情報処理推進機構)、警察庁、警視庁、全国銀行協会、預金保険機構、JPCERT/CC(日本のサイバー事故の対応を調整する機関)の公式ページと、法律の条文を2026年10月30日時点で確かめたものです。いちばん大事なのは、気づいたらすぐ、送金に使った銀行に連絡することです。この記事を読むのは、そのあとで構いません。
1. いま、どんな状態ですか?
2. 振り込んだのはいつですか?
3. 当てはまるものは?(ぜんぶ)
01この記事でわかること(3行まとめ)
取引先の口座に振り込んだら、偽物のメールだったみたい!どうするの?
まず送金に使った銀行に電話して、取り消しや組戻しを頼んでください。そのあとメールを残し、取引先に電話で確かめ、警察に相談します。
送金元の銀行に取り消し・組戻しを頼む
救済法でも口座に残った金額が上限
ヘッダごと保存し、取引先に電話で確認
- まず送金に使った銀行に電話する。IPA、警察庁、警視庁はそろって、送金元の銀行に送金の取り消しや「組戻し(くみもどし)」を急いで頼むよう案内しています。全国銀行協会は、振込先の口座がある銀行にも連絡し、警察に届け出るよう案内しています。
- お金が戻るかは、時間と口座の残高しだい。IPAは、取り戻せた例も、取り戻せなかった例もあるとしています。国内の口座なら「振り込め詐欺救済法」の手続きで戻る場合がありますが、上限は口座に残っていた金額までです。
- メールを残し、乗っ取りを調べ、電話で確かめる。だましのメールはヘッダ(配送の記録)ごと保存し、自社と取引先のメールアカウントが乗っ取られていないかを確認します。取引先にはメール以外の方法で連絡します。
ビジネスメール詐欺は、パソコンが壊れるような攻撃ではありません。メールのやり取りに割り込み、人をだまして送金させる詐欺です。そのため、慌てて「メールを全部消す」「パソコンを初期化する」と、あとで調べる手がかりがなくなります。消さずに、順番に動いてください。
02そもそもビジネスメール詐欺って何?(1分でわかる)
ビジネスメール詐欺って、そもそも何なの?
取引先や社長になりすました偽メールで、犯人の口座に振り込ませる詐欺です。いつもの取引先そっくりの手紙で振込先を変えさせるようなものです。
メールをのぞいて取引や担当者を調べる
取引先や社長のふりをしてメールを送る
「口座が変わった」と犯人の口座へ
ビジネスメール詐欺は、取引先や自社の社長になりすました偽のメールで、犯人の口座にお金を振り込ませる詐欺です。英語の頭文字を取って「BEC(ビーイーシー、Business Email Compromise)」とも呼ばれます。IPAは「偽の電子メールを組織・企業に送り付け、従業員を騙して攻撃者の用意した口座へ送金させる詐欺の手口」と説明しています。
たとえるなら、いつもの取引先の封筒とそっくりの封筒で「今月から振込先が変わりました」という手紙が届き、その手紙が実は泥棒の書いたものだった、というようなものです。差出人の名前も、書き方も、いつもの請求書とほとんど同じなので、受け取った人は疑いにくいのです。
警察庁は、指定される口座は海外であることが多く、一度送金されると回収が極めて困難になると注意しています。この記事に出てくる言葉は、次の意味です。
| 言葉 | やさしく言うと |
|---|---|
| なりすまし | 他人のふりをすること。メールの差出人名や署名をまねる |
| 組戻し(くみもどし) | いったん振り込んだお金を、銀行を通じて取り消して戻してもらう手続き |
| 振り込め詐欺救済法 | 詐欺に使われた国内の口座を凍結し、残っていたお金を被害者に分ける仕組みを決めた法律 |
| メールヘッダ | メールが「どこから、どこを通って届いたか」の記録。本文の下に隠れている |
| 転送設定 | 届いたメールを自動で別のアドレスに送る設定。犯人がこっそり仕込むことがある |
| 多要素認証 | パスワードのほかに、スマホに届く番号などでも本人か確かめる仕組み |
技術だけで防ぐのが難しい詐欺だ、という点も覚えておいてください。IPAの2017年の注意喚起は、技術的な対策で防ぐのは難しく、一人ひとりが手口を理解して「怪しさ」を見抜くことが重要だとしています。言葉の意味は用語集「ビジネスメール詐欺」にもまとめています。
03ビジネスメール詐欺の手口:IPAが紹介する5つのタイプ
どんな手口があるの?
IPAは5つのタイプを紹介しています。多いのは、取引先のふりをした偽の請求書と、社長のふりをした送金の指示です。
取引先のふりで口座を差し替えた請求書
社長や役員のふりで送金を指示する
本物のアドレスから偽の請求書を送る
機密案件として秘密の送金を迫る
IPAは2017年4月3日のレポートで、米国の IC3(FBIのインターネット犯罪の窓口)などの分類にならい、手口を次の5つのタイプに分けて紹介しています。
| タイプ | どんな手口か |
|---|---|
| 1. 取引先との請求書の偽装 | 取引先になりすまし、犯人の口座に差し替えた偽の請求書を送って振り込ませる |
| 2. 経営者等へのなりすまし | 社長や役員になりすまし、従業員に犯人の口座へ振り込ませる |
| 3. 窃取メールアカウントの悪用 | 従業員のメールアカウントを乗っ取り、そのアドレスから取引先に偽の請求書を送る |
| 4. 社外の権威ある第三者へのなりすまし | 弁護士などになりすまし、「緊急の機密案件」として秘密裏の送金を迫る |
| 5. 詐欺の準備行為と思われる情報の詐取 | 経営者や人事担当になりすまし、社員の個人情報などを聞き出す。送金要求の前段階 |
IPAの特設ページは、このうちタイプ1とタイプ2の事例を多く確認しているとしています。タイプ1は、主に海外の企業と取引している会社で被害が多いそうです。タイプ2は、財務や経理など、お金を管理する部門が狙われやすく、「秘密の案件で相談がある」といった連絡を装うことが多いとしています。
犯人は、前もってメールを盗み見て、取引の内容や担当者の名前を調べていることがあります。IPAの2017年の注意喚起では、請求する側と支払う側の両方になりすまして2社を同時にだます、CC(同報先)を偽物に差し替えてほかの関係者に届かないようにする、引用された過去のやり取りを書き換える、といった手口が紹介されています。2018年7月には、IPAが初めて日本語のビジネスメール詐欺を確認したとしています。
最近の例として、警察庁は2026年2月13日に「ニセ社長詐欺」への注意を呼びかけました。会社の公開アドレスに社長を名乗るメールが届き、「新しいプロジェクトのため」とSNSのグループを作らせ、振込の権限を持つ担当者を入れさせ、口座の残高を答えさせたうえで送金させる流れです。メール以外に、電話を使う手口があることもIPAのFAQで触れられています。
家賃や仕入れ代金など、相手が誰であっても「振込先が変わった」という連絡が来たときの考え方は同じです。メールに書かれた連絡先ではなく、前から知っている電話番号にかけて確かめます(後の「再発防止」の節でくわしく)。
04送金してしまったら最初の1時間でやること(この順番で)
振り込んじゃった…まず何から?
送金に使った銀行への電話が先です。振込先の銀行にも知らせ、メールはヘッダごと残し、取引先にはメール以外で確かめます。
取り消し・組戻しを急いで頼む
口座の取引停止を頼み、警察に届け出る
ヘッダと添付ごと保存、時系列をメモ
署名欄でなく手元の番号にかける
メールの資料を持って警察署へ
責任者に知らせ、調べる人を絞る
IPA、警察庁、警視庁、全国銀行協会の案内に共通する動きを、やる順番に並べました。
1. 送金に使った銀行に電話する(取り消し・組戻しの依頼)
IPAは、送金に使った銀行に、送金のキャンセルや組戻しの手続きを早急に頼むよう案内しています。警察庁と警視庁も、送金元の銀行に取り消しや組戻しを依頼するよう書いています。いつ、いくら、どの口座に送ったかが分かる控え(振込の明細)を手元に用意して電話します。
あわせて、全国銀行協会は、振り込め詐欺などで振り込んでしまった場合は振込先の口座がある銀行に連絡して振り込んだ事実を伝え、同時に必ず警察にも届け出るよう案内しています。預金保険機構も、振込先の金融機関に口座の取引の停止を頼むよう書いています。犯人が口座からお金を引き出す前に止められるかどうかが、取り戻せるかを分けます。
2. だましのメールを残す(消さない)
警察庁と警視庁は、犯人から届いたメールと、メールヘッダの情報を保存するよう案内しています。偽の請求書などの添付ファイルも、そのまま残します。IPAは、ログを含む証拠を確保し、経緯を時系列でまとめるよう勧めています。いつ、どのメールが届き、誰が、いつ、何をしたかをメモに書き出してください。
3. 取引先に、メール以外の方法で事実を確かめる
本当に取引先が口座を変えたのか、取引先のメールも乗っ取られていないかを確かめます。このとき、だましのメールに返信したり、メールの署名欄の電話番号にかけたりしてはいけません。警察庁は、名刺や自分のアドレス帳など、信頼できる方法で手に入れた連絡先を使うよう案内しています。取引先にも、同じ偽メールを保存してもらうよう頼みます(IPA、警視庁)。
4. 警察に相談する
警察庁は、メールなどの資料を持って最寄りの警察署に通報・相談するよう案内しており、前もって電話で日時や持っていく資料を相談しておくとスムーズだとしています。都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口も使えます。警察庁は、警察相談専用窓口「#9110」も案内しています。
5. 社内の責任者に知らせ、調べる人を絞る
経営者と経理の責任者に知らせ、これ以上の送金が出ないよう止めます。警察庁は、内部の人が関わっている可能性もあるため、調査は少人数で行うのが望ましいとしています。
社員が不審なメールの添付ファイルやリンクを開いていた場合の動き方は、変なメールを開いてしまったときの記事にまとめています。
05お金は取り戻せる?組戻しと振り込め詐欺救済法
お金はちゃんと戻ってくるの?
必ず戻るとは言えません。国内の口座なら救済法の手続きがありますが、戻るのは凍結時の口座の残高までです。
送金元の銀行で取り消しを頼む手続き
凍結した口座の残高を被害者で分ける
引き出されていれば、そのぶん減る
先に結論を書くと、必ず戻るとは言えません。IPAのFAQは、回収に成功した例も失敗した例もあり、必ず回収できるとは限らないが、発覚したら直ちに送金元の銀行に連絡することが重要だとしています。IPAの事例集には、偽の口座に送金したあと一部の資金を取り戻せた例や、送金先の銀行やメインバンクに連絡して振込の処理を止められた例が載っています。
組戻し:振り込んだお金を取り消す手続き
組戻しは、振込を頼んだ銀行を通じて、振り込んだお金を戻してもらう手続きです。IPAや警察庁が最初に挙げているのがこれです。犯人がまだ口座からお金を動かしていなければ、戻る可能性が上がります。手続きの細かい条件や手数料は銀行ごとに違うので、電話のときにその場で確かめてください。
振り込め詐欺救済法:凍結した口座の残高を分ける仕組み
正式な名前は「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」で、2008年6月21日に施行されました。法律は対象の犯罪を「詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為であって、財産を得る方法としてその被害を受けた者からの預金口座等への振込みが利用されたもの」と定めています。名前は「振り込め詐欺」ですが、振込みを使った詐欺が広く対象です。
預金保険機構によると、流れは次のとおりです。金融機関が、詐欺でお金が振り込まれた口座を凍結します。預金保険機構のサイトで、口座の持ち主の権利をなくす「公告」を出します。そのあと被害者からの申請を受け付け、「被害回復分配金」を支払います。全国銀行協会によると、手続きには全体で90日以上かかります(権利をなくす手続きに60日以上、被害者の申請期間に30日以上)。
注意点も、公式ページにはっきり書かれています。
- 戻るのは、口座に残っていた金額まで。分配される額は、口座が凍結されたときの残高が上限で、被害額の全額を国や金融機関が埋め合わせるものではありません(預金保険機構)。
- ほかの被害者と分ける。同じ口座に複数の被害者がいれば、被害額に応じて分けます。お金が一部引き出されていれば、そのぶん減ります。
- 残高が1,000円未満なら支払われない。全国銀行協会と預金保険機構が案内しています。
- 申し出ても対象にならない場合がある。全国銀行協会はそう注意しています。対象になるかは、振込先の金融機関に問い合わせます。
- 申請期間を過ぎると受け取れない。ただし、そのあとでも加害者にお金を返すよう民事で求めることはできるとしています(預金保険機構)。
自社が振り込んだ口座が公告されているかは、預金保険機構の公告ページで口座番号から調べられます。ただ、預金保険機構は、公告をずっと見張るのは大変なので、振込先の金融機関に問い合わせるのが効率的だとしています。この法律は国内の金融機関の口座のための仕組みなので、海外の口座に送った場合は次の節を見てください。
保険について、IPAのFAQは、補償された例もあるものの、犯人の口座への振込は国内のサイバー保険では一般に補償の対象外になることが多いとしています。サイバー保険に入っている会社は、保険会社に早めに確かめてください。
なお、金融庁は、この制度の返金を装って電話やチラシで勧誘する詐欺に注意を呼びかけています。制度による返金は、預金保険機構と金融機関が行う「被害回復分配金の支払手続」だけです。
06海外の口座に送金してしまった場合
海外の口座に送っちゃった場合は?
回収は極めて困難とされています。銀行に加え、現地の警察に口座の凍結を相談します。米国の口座ならFBIやIC3への通報も有効です。
銀行に組戻しと取引停止を頼み警察へ
銀行に加え現地警察へ。米国ならIC3も
警察庁が注意しているとおり、ビジネスメール詐欺で指定される口座は海外であることが多く、一度送ると回収は極めて困難です。そのぶん、最初の連絡の速さが大切になります。
IPAは、振込先が海外の口座の場合や、海外の拠点から振り込んだ場合は、送金元の銀行への連絡に加えて、その地域の現地警察に連絡し、口座の凍結や資金の回収を相談するよう案内しています。偽の口座がアメリカにある場合は、FBIや IC3 への通報も有効とされています。
IPAの事例集には、海外の取引先が偽の口座に送金手続きをしたものの、国内の会社が送金先の銀行やメインバンクに通報・連絡して振込の処理を止められた例があります。海外の子会社や支店がだまされた場合も、本社だけで抱え込まず、現地の担当者と同時に動いてください。外国の銀行とのやり取りは、自社の取引銀行の担当者に、何ができるかを相談するのが近道です。
07自社のメールが乗っ取られていないか確かめる
うちのメールが盗み見られてたってこと?
その可能性があります。ログイン履歴、勝手な転送設定や振り分け設定を確かめ、パスワードを変えてください。
特に海外からのログイン履歴
外部アドレスへの自動転送
普段見ないフォルダへの移動
変えて、ほかと別のものにする
犯人が取引の内容を知っていたなら、どこかでメールを盗み見られていた可能性があります。IPAのFAQは、盗み見の原因として、ウイルスによるメールや認証情報の盗み出し、フィッシング(偽のログイン画面)でのパスワードの詐取、勝手に仕込まれた転送設定を挙げています。IPAと警察庁の案内をもとに、確かめる点を並べました。
- 関係した人全員のパソコンをウイルスチェックする。
- メールのパスワードを変える。ほかのサービスと使い回さない、推測されにくいものにします。
- 不正なログインがないか見る。メールサービスのログイン履歴で、特に海外からのログインがないかを確かめます。
- 転送設定と振り分け設定を見る。外部のアドレスへの自動転送や、普段見ないフォルダへメールを移す設定が勝手に作られていないかを確かめます。
- 関係者に聞き取りをする。不審なメールを開いていないか、パスワードを使い回していないかを聞きます。IPAは、聞き取りの範囲の目安を1年以内としています。
原因の調査は、外部のセキュリティ専門会社に頼むのも選択肢だとIPAは書いています。自社のメールが乗っ取られて、取引先やお客様の情報が外に出たおそれがあるときは、個人情報が漏れたかもしれないときに会社がやることの記事の手順で、報告の要否を確かめてください。会社のホームページ側も書き換えられていた場合はホームページが乗っ取られたときの記事を見てください。
08取引先・社内への連絡のしかた
取引先にはどう伝えればいいの?
電話など決まった経路で連絡し、偽メールの保存と調査を頼みます。自社の名前を使われたなら、注意を呼びかけます。
偽メールの保存と調査を頼む
社内外とグループ会社に注意喚起
送金の有無にかかわらず事例を伝える
ビジネスメール詐欺では、だまされた側だけでなく、名前を使われた側も当事者です。IPAのFAQは、支払う側だけでなく請求する側も標的になりうるとしています。
- 取引先には、電話など決まった経路で連絡する。IPAは、取引先に偽メールの保存と状況の調査を頼むこと、その際のメール以外の連絡経路を前もって決めておくことを勧めています。乗っ取りが解決するまでは、口座や金額の話をメールだけで進めないようにします。
- 自社の名前が使われたら、注意を呼びかける。IPAは、自社を名乗られた場合は社内外に注意喚起を行い、グループ会社の間で事例を共有するよう勧めています。取引先全体や一般に向けて公表することも検討してよいとしています。
- 社内では、窓口と情報をまとめる。不審なメールが来たら報告できる先を決め、集めた情報をほかの担当者にも知らせます。ほかの社員に同じメールが届いていることに気づけるからです。
IPAは、送金したかどうかにかかわらず、事例をIPAに情報提供することを勧めています。ほかの会社の被害を防ぐ材料になります。
09再発防止:振込先の変更は電話で確かめる
二度とだまされないためには?
振込先の変更は、前から知っている番号に電話して確かめるまで払わない。送金は二人で承認する。これがいちばん効きます。
登録済みの番号にかけるまで払わない
振込先の登録・変更は別の人も確認
メールのパスワードを盗まれても守る
自社をかたる偽メールを届きにくく
IPA、警察庁、警視庁が挙げる対策を、中小企業でもできる順に並べました。
振込先の変更や急ぎの送金は、メール以外で確かめる
いちばん効くのがこれです。IPAは、急な振込先や決済手段の変更があったら、取引先にメール以外の方法で確かめるよう求めています。連絡先は、メールの署名欄ではなく、名刺や前からの取引記録など信頼できる方法で手に入れたものを使います。社長からの指示も同じで、IPAの事例集には、社長を名乗る支払い要求に不審な点を感じた役員が社長に電話で確かめ、被害を防いだ例があります。「振込先の変更は、登録済みの電話番号にかけて確かめるまで払わない」と社内のルールに書いておきます。
一人で送金を完結させない(二重の確認)
警視庁は、送金のルールを厳しくし、複数の担当者で確かめる体制を徹底するよう勧めています。IPAも、送金前のチェック体制を強め、複数の防御の層を設けるよう書いています。振込先の新規登録や変更は、担当者と別の人(上司など)の2人で承認する形にしておくと、だまされた人が一人いても止まります。
メールアカウントを守る(多要素認証)
IPAは、セキュリティソフトを入れて最新にすること、メールのパスワードを複雑にして使い回さないこと、メールシステムに多要素認証やアクセス制限を入れることを検討するよう案内しています。多要素認証があれば、パスワードを盗まれても、それだけではログインされにくくなります。
自社の名前をかたるメールを届きにくくする(DMARC)
警察庁は、事業者が自社のドメイン(メールアドレスの「@」の後ろ)を悪用されないよう、送信ドメイン認証の導入を検討すべきだとしています。SPFは送信元の正しさを、DKIMは電子署名で送信元を確かめる仕組みで、DMARCはこの2つを組み合わせ、認証に失敗したメールをどう扱うかを送る側が指定できる仕組みです。ただし、IPAの2017年のレポートには、犯人がよく似た別のドメインを取って、そのドメインでは認証が通る状態にしていた例も載っています。DMARCは「自社をかたる偽メール」を減らす対策で、そっくりなアドレスを見分けるのは最後は人の目です。
電子署名と、似たドメインの確認
警察庁とIPAは、請求書などをメールでやり取りするときに電子署名を付けると、なりすましを見分けやすくなるとしています。IPAは、自社に似たドメインが取られていないかを定期的に調べ、必要なら注意を呼びかけることも勧めています。メールを守る製品を比べたいときはメールセキュリティの分類ページを見てください。
10相談先の一覧
結局どこに相談すればいいの?
最初は送金に使った銀行です。次に振込先の銀行と警察。救済法の手続きは振込先の銀行と預金保険機構に聞けます。
取り消し・組戻しの依頼
取引停止と救済法の問い合わせ
警察署・サイバー窓口・#9110
公告と救済法の手続きの質問
| 相談先 | こんなときに |
|---|---|
| 送金に使った銀行 | 送金の取り消し・組戻しの依頼。いちばん最初に |
| 振込先の口座がある銀行 | 口座の取引の停止の依頼、振り込め詐欺救済法の手続きの問い合わせ |
| 最寄りの警察署・都道府県警察のサイバー犯罪相談窓口 | 被害の通報・相談。メールの資料を持っていく |
| 警察相談専用電話 #9110 | 警察への相談(警察庁の案内) |
| 預金保険機構 振込詐欺被害回復業務課(03-6262-6794) | 公告や救済法の手続きの問い合わせ。平日9時30分〜18時 |
| IPA | 事例の情報提供、企業向けのセキュリティの相談 |
| 海外の現地警察、FBI・IC3 | 海外の口座に送った場合(IPAの案内) |
全国銀行協会は、全国の銀行協会が運営する「銀行とりひき相談所」と、全国銀行協会相談室も案内しています。銀行とのやり取りで困ったときに使えます。被害のあとの流れ全体は被害に遭ったときのページにもまとめています。
送金の被害で手元の資金が足りなくなったときは、資金繰り総研の資金繰り改善の方法も参考にしてください。
11よくある質問
Qビジネスメール詐欺とは、ふつうの詐欺メールと何が違う?
会社をねらい、取引先や社長になりすまして、仕事の支払いとして犯人の口座へ振り込ませる点です。犯人は前もってメールを盗み見て、取引の内容や担当者の名前を調べていることがあるため、本物との見分けがつきにくくなります。
Q送金してしまったら、最初にどこへ連絡する?
送金に使った銀行です。IPA、警察庁、警視庁が、送金の取り消しや組戻しを急いで頼むよう案内しています。全国銀行協会は、振込先の口座がある銀行への連絡と、警察への届け出もあわせて案内しています。
Qお金は全額戻ってくる?
分かりません。IPAは、回収できた例もできなかった例もあるとしています。振り込め詐欺救済法で戻るのは、凍結した時点で口座に残っていた金額が上限で、ほかの被害者がいれば被害額に応じて分けます。
Q振り込め詐欺救済法は、会社の被害にも使える?
法律は、振込みを使った詐欺などの犯罪を広く対象にしており、被害者を個人に限る書き方にはなっていません。ただし、対象になるかどうかは振込先の金融機関に問い合わせて確かめます。海外の口座は、この仕組みの対象外です。
Qメールが乗っ取られていたか、どう確かめる?
メールサービスのログイン履歴で見覚えのないログイン(特に海外から)がないか、外部への自動転送や不審な振り分けの設定がないかを確かめます。パスワードも変えます。分からなければ、メールの管理者や専門の会社に頼みます。
Q振込先の変更の連絡が来たら、どうすればいい?
払う前に、前から知っている電話番号で相手に確かめます。メールの署名欄の電話番号は偽物かもしれないので使いません。取引先でも、家賃の振込先でも、社長からの指示でも同じです。
Qサイバー保険で補償される?
IPAのFAQは、補償された例もあるものの、犯人の口座への振込は国内のサイバー保険では一般に対象外になることが多いとしています。契約の中身を保険会社に確かめてください。
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出典(一次資料)19件被害を受けた組織や公的機関の発表だけを出典にしています(2026.11.01に確認)開く
- 1IPA「ビジネスメール詐欺(BEC)対策特設ページ」 ↗www.ipa.go.jp
- 2IPA「ビジネスメール詐欺のパターンとは」 ↗www.ipa.go.jp
- 3IPA「もし詐欺被害に遭ってしまったら」 ↗www.ipa.go.jp
- 4IPA「ビジネスメール詐欺 FAQ」 ↗www.ipa.go.jp
- 5IPA「ビジネスメール詐欺の対策について知る」 ↗www.ipa.go.jp
- 6IPA「ビジネスメール詐欺の事例集」 ↗www.ipa.go.jp
- 7IPA「ビジネスメール詐欺「BEC」に関する事例と注意喚起」(2017年4月3日) ↗www.ipa.go.jp
- 8IPA「【注意喚起】偽口座への送金を促す“ビジネスメール詐欺”の手口」 ↗www.ipa.go.jp
- 9警察庁「ビジネスメール詐欺に注意!」 ↗www.npa.go.jp
- 10警察庁「法人を対象とした詐欺(ニセ社長詐欺)に注意!」(2026年2月13日) ↗www.npa.go.jp
- 11警察庁「フィッシング対策」(事業者における対策) ↗www.npa.go.jp
- 12警視庁「ビジネスメール詐欺(BEC)対策」 ↗www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp
- 13JPCERT/CC「ビジネスメール詐欺に注意」 ↗www.jpcert.or.jp
- 14全国銀行協会「振り込め詐欺救済法とは」 ↗www.zenginkyo.or.jp
- 15全国銀行協会「金融犯罪に遭った場合のご相談・連絡先」 ↗www.zenginkyo.or.jp
- 16預金保険機構「振り込め詐欺救済法に基づく公告」 ↗furikomesagi.dic.go.jp
- 17預金保険機構「振り込め詐欺救済法 Q&A」 ↗furikomesagi.dic.go.jp
- 18金融庁「振り込め詐欺救済法に基づく返金制度を装った詐欺にご注意ください」 ↗www.fsa.go.jp
- 19e-Gov法令検索「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」 ↗laws.e-gov.go.jp

