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取引先からセキュリティチェックシートが来た!質問の型、できていない項目の書き方、用意する資料と誰が答えるか

  • 18分で読める
  • 一次資料17件
  • セキュリティ図鑑編集部
取引先からセキュリティチェックシートが来た!質問の型、できていない項目の書き方、用意する資料と誰が答えるか
数十〜数百

委託元ごとに求められる項目の数

IPA 概要説明資料
26件

★3の要求事項(物差しの例)

IPA SCS評価制度
25項目

5分でできる自社診断

IPA 付録3
3類型

問題となるおそれがある行為

公取委・経産省

SUMMARY

要点をまとめると

  1. 01

    取引先のセキュリティチェックシートは、まず目的・期限・対象範囲を聞き、できていない項目は「今の状態・代わりの手当て・予定日」で正直に書きます。

  2. 02

    質問は体制、資産、認証、更新、バックアップ、事故対応などの型に分かれます。

  3. 03

    要請そのものは直ちに問題になりませんが、費用は価格交渉の対象になり得ます(2026年11月1日時点)

取引先あなたの会社裏口から

そもそもセキュリティチェックシートとは?

取引先が、自社のセキュリティ対策の状況を確かめるために送ってくる質問票です。

  1. 1取引先が聞く体制・設定・事故対応
  2. 2自社が答えるできていない点は予定も
  3. 3話し合う必要な対策と費用

IPAのSCS評価制度の資料と公正取引委員会・経済産業省の文書をもとに、やさしく言い換えています。

この記事をスライドで理解する(6枚)

1 / 6
この記事でわかること(…届いたら最初に確認する…チェックシートは何を聞…つまずきやすい言葉の読…答えの選び方:4つの段…できていない項目の書き…6つの見出し

この記事の流れ

取引先からセキュリティチェックシートが来た!質問の型、できていない項目の書き方、用意する資料と誰が答えるか

シートに「やっていない」と書いたら、取引を切られない?

まず、その項目が取引の条件なのかを聞きましょう。IPAは、要求事項を満たしていないことを理由に直ちに取引停止を求める制度ではないとしています。隠さず、今の状態と予定を書くのが基本です。

数十〜数百委託元ごとに求められる項目の数
26件★3の要求事項(物差しの例)
25項目5分でできる自社診断
3類型問題となるおそれがある行為

数字で見る

数字で見ると、こうなります

委託元ごとに求められる項目の数:数十〜数百/★3の要求事項(物差しの例):26件

?
何のためのシート?審査か、定期の点検か
?
どの範囲で答える?全社か、その業務だけか
?
期限は延ばせる?時間がかかる項目は先に伝える
?
未実施だとどうなる?取引の条件かどうか

POINT 1

届いたら最初に確認する5つのこと

この5つは、メールで聞いて文面を残します。担当者が口頭で答えた内容は、あとで食い違うことがあるからです。

本文で読む
全部実施している聞かれた範囲すべてで動いている
一部一部実施範囲を分けて書く
これから未実施理由・手当て・予定を書く
対象外該当なし理由を一言添える

POINT 2

答えの選び方:4つの段階で考える

シートの選択肢は「はい・いいえ」だけのこともあります。迷ったら、IPAの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」が使う「実施している・一部実施している・実施していない・わからない」に沿って考えると、判断がそろいます。

本文で読む
1窓口やり取りと期限の管理
2技術の確認設定と機器を調べる
3業務の確認現場の扱いを確かめる
4決裁読んで承認する

POINT 3

誰が答えるか:4つの役割に分ける

専任者がいなくても回せます。大事なのは、1人に全部を任せないことです。

本文で読む
1
何のためのシートか。
2
どの範囲で答えるのか。
3
期限と、延ばせるか。

まとめ

今すぐやること

くわしい手順と出典は、本文で確かめてください。

本文で読む

ある日、取引先から「セキュリティチェックシートにご回答ください」とExcelが届く。項目は何十もあり、知らない言葉が並び、期限は来週。正直に「やっていない」と書いたら取引を切られるのでは、と不安になります。担当者がいない会社では、誰が答えるのかも決まっていません。

この記事は、公正取引委員会と経済産業省の「サプライチェーン全体のサイバーセキュリティ向上のための取引先とのパートナーシップの構築に向けて」と想定事例、IPAのSCS評価制度と「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」の公式ページを2026年11月1日時点で確かめてまとめました。チェックシートの決まった様式は国にはありません。質問の型と書き方は、これらの資料をもとにした図鑑の整理です。

01この記事でわかること(3行まとめ)

社長

シートに「やっていない」と書いたら、取引を切られない?

まず、その項目が取引の条件なのかを聞きましょう。IPAは、要求事項を満たしていないことを理由に直ちに取引停止を求める制度ではないとしています。隠さず、今の状態と予定を書くのが基本です。

ハカセ
最初に目的と範囲を聞く

どの業務について答えるかで変わる

未実施正直に書く

今の状態・手当て・予定日

費用費用は交渉の対象

要請を受けた費用は話し合う

  • 最初に、目的・期限・対象範囲を聞きます。どの会社のどの業務について答えるのかで、答えは変わります。
  • できていない項目は、隠さず「今の状態・代わりの手当て・予定日」で書きます。IPAは、要求事項を満たさないことを理由に直ちに取引停止を求める制度ではないとしています。
  • 費用がかかる要請は、価格の交渉の対象です。要請そのものは直ちに問題になりませんが、進め方によっては独占禁止法や取適法の問題になり得ます。

02届いたら最初に確認する5つのこと

?
何のためのシート?

審査か、定期の点検か

?
どの範囲で答える?

全社か、その業務だけか

?
期限は延ばせる?

時間がかかる項目は先に伝える

?
未実施だとどうなる?

取引の条件かどうか

?
証拠は要る?

回答だけか、資料も出すか

  1. 何のためのシートか。新規取引の審査か、毎年の点検か、事故を受けた臨時の調査かを聞きます。
  2. どの範囲で答えるのか。全社か、その取引に関わる部署や拠点だけか。工場の設備や納品する製品も含むのかを聞きます。
  3. 期限と、延ばせるか。調べるのに時間がかかる項目は、先に「◯日までに回答します」と伝えます。
  4. 「未実施」と書いた場合にどうなるのか。取引の条件なのか、状況を知るためなのかで、優先順位が変わります。
  5. 証拠の提出が要るのか。回答だけでよいのか、規程や画面の写しまで求められるのかを聞きます。

この5つは、メールで聞いて文面を残します。担当者が口頭で答えた内容は、あとで食い違うことがあるからです。返信の宛先が普段の担当者か、ファイルの依頼が本当にその会社からかも見てください。取引先を名乗るメールの手口はビジネスメール詐欺の記事にまとめています。

03チェックシートは何を聞いているのか:よくある質問の型

IPAの概要説明資料は、委託元ごとに要求が違い、様式もばらばらで、数十から数百の項目に対応する負担が生じていると説明しています。ただ、言い回しは違っても、聞かれることの中身はかなり似ています。IPAが公開しているSCS評価制度の★3の要求事項(26件)を物差しにすると、次の型に分けられます。

型 よくある聞き方 ★3の要求事項の例 最初に見る場所
体制 責任者はいますか。連絡先は決まっていますか セキュリティ推進活動部門、守秘義務のルール 社内の体制図、就業規則や誓約書
方針 基本方針を定めて周知していますか セキュリティ対応方針の策定 IPAの基本方針サンプル
取引先との関係 預かった情報の扱いや、事故時の役割を決めていますか 機密情報の取扱い、インシデント発生時の役割・責任 契約書、秘密保持契約
資産の把握 機器やソフト、クラウドの一覧はありますか 情報機器・OS・ソフトウェアの把握、外部情報サービスの管理 資産の台帳、保守会社の資料
アカウント 退職者のIDを消していますか。管理者IDの扱いは ユーザID・管理者IDの管理手続 管理画面、社内の手順
認証とパスワード パスワードのルール、多要素認証、画面のロックは 認証の強度、パスワード設定・管理ルール、アカウントロック制御 クラウドの設定画面
教育 事故に備えた教育や訓練をしていますか インシデント発生時の教育・訓練 研修の記録
更新とウイルス対策 更新の手順はありますか。全台で動いていますか パッチ・アップデートの手続、マルウェア感染からの保護 Windows Update、管理画面
ネットワーク 社外との境界を守っていますか。通信を見ていますか ネットワーク境界防護、ネットワーク接続・データの監視 ルーターやUTMの契約
バックアップと復旧 定期的に取っていますか。戻せますか 適切なバックアップ、復旧に必要な準備 バックアップの記録
事故対応 手順はありますか。誰に報告しますか インシデント対応手順 連絡先の一覧、IPAの手引き

業界によっては共通の様式があります。たとえば自動車業界では、日本自動車工業会と日本自動車部品工業会が「自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドライン」を公開し、業界共通の自己評価基準を示しています(公開ページの最新版はV2.3)。まず、取引先の業界に公開の基準がないか調べると、質問の意図を読み取りやすくなります。

知らない言葉は多要素認証やUTM、EDRのように用語のページで調べられます。IPAのよくある質問によると、SCS評価制度はEDRや資産管理システムなど特定の製品の導入を求めるものではありません。製品名で聞かれても、同じ目的を別の方法で満たしているなら、その方法を書いて構いません。ただし、取引先のシート自体の評価は相手が決めます。

04つまずきやすい言葉の読み方

シートの言葉は、会社によって意味の幅があります。次の表は図鑑の読み方の目安です。どこまで求めているか分からなければ、質問して構いません。「この項目は、◯◯という理解で回答してよいですか」と聞くのが、いちばん早く確実です。

シートの言葉 読み方の目安 答える前に見ること
定期的に 頻度を問われている。★3の評価基準にも、年1回以上の点検を求める項目がある いつ、誰がやったか。記録があるか
全社で、すべての端末で 例外がないかを問われている 私物のスマホ、古いパソコン、派遣社員の端末
規程、手順 文書になっているかを問われている 口頭の決まりは「一部実施」として書く
アクセス権 必要な人だけが見られるかを問われている 共有フォルダとクラウドの共有範囲
ログ いつ誰が何をしたかの記録を問われている 保存の期間、誰が見られるか
脆弱性 ソフトや機器の弱点を問われている 更新の状況。診断を受けたかは別に書く
委託先の管理 自社が頼んでいる会社の扱いを問われている 委託先の一覧、契約の秘密保持の条項

聞かれた内容と自社のやり方が少し違うときは、無理に当てはめず、自由記述の欄か備考に一言添えます。「該当する仕組みはないが、同じ目的で◯◯をしている」と書けば、相手も判断できます。備考欄がなければ、別紙を付けてよいか聞きましょう。

05答えの選び方:4つの段階で考える

全部実施している

聞かれた範囲すべてで動いている

一部一部実施

範囲を分けて書く

これから未実施

理由・手当て・予定を書く

対象外該当なし

理由を一言添える

シートの選択肢は「はい・いいえ」だけのこともあります。迷ったら、IPAの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」が使う「実施している・一部実施している・実施していない・わからない」に沿って考えると、判断がそろいます。「わからない」のまま出さず、調べてから答えるのが基本です。

状態 選ぶ目安 書き添えること
実施している 全社(聞かれた範囲すべて)で、決まりがあり、実際に動いている 決まりの名前、最後に点検した日
一部実施 一部の機器や部署だけ。決まりはないが実際にはやっている できている範囲、残りの範囲、予定日
未実施 やっていない 理由、代わりの手当て、予定日または検討中である旨
該当なし その仕組みをそもそも持たない(例:自社サーバーがない) 該当しない理由を一言

「全員にパスワードのルールを口で伝えている」は、文書のルールを求める質問には「実施」と言い切れません。「一部実施」として実情を書くほうが、後で説明しやすくなります。同じ会社に別のシートで違う答えを出さないよう、答えた内容は控えておきます。

虚偽の回答はしないでください。SCS評価制度でも、虚偽報告や情報隠蔽などの不正が確認された場合、★を取り消すことがあるとされています。取引先のシートでも、事故のあとに食い違いが見つかれば、信用を大きく損ないます。これは図鑑の考えですが、正直な「未実施」のほうが、話し合いの出発点になります。

06できていない項目の書き方:例文

社長

「未実施」って書くだけじゃ、まずいよね?

今の状態、代わりの手当て、いつまでにの3つを書きます。確実に守れる日だけを書き、費用がかかるものは先に社長の了解を取ります。

ハカセ

ポイントは「今の状態」「代わりの手当て」「いつまでに」の3つです。できない予定日を書くと次の負担になるので、確実な日を書きます。決まっていなければ「費用を含めて検討中。◯月に回答します」で構いません。

聞かれたこと 避けたい書き方 書き方の例
多要素認証を全サービスに設定しているか 未実施 一部実施。メールとクラウドの管理者は設定済み。一般の利用者は2027年3月末までに設定予定
EDRを導入しているか いいえ 未実施。全端末でウイルス対策ソフトを有効にし、更新を確認している。監視サービスは次の予算で検討中
情報セキュリティ規程はあるか 作成中 一部実施。基本方針は公開済み。関連規程はIPAのサンプルをもとに2027年1月末までに整備予定
バックアップの復元試験をしているか たぶんしている 未実施。週1回の取得は確認済み。復元の試験は2026年12月に初めて実施予定
事故時の連絡手順はあるか 特になし 一部実施。社内の連絡先と保守会社の窓口は一覧あり。貴社への連絡は窓口を教えていただき追記予定

担当者の判断で予定日を書かず、費用がかかる予定は経営者の了解を取ってから書きます。書いた予定は取引先との約束に近いものになるからです。社内には「回答した予定の一覧」を残し、期日の前に見直します。

07用意しておく資料:シートが来る前に揃えるもの

毎回ゼロから調べると時間がかかります。次の資料を1つのフォルダにまとめておくと、次のシートはずっと早く答えられます。IPAの資料は無料で公開されています。

資料 内容 無料の手本
基本方針 会社としての考え方。公開すれば二つ星の条件にもなる ガイドライン付録2
自社診断の結果 25項目の点数と、弱いところ ガイドライン付録3
社内ルール パスワード、持ち出し、退職時の手順など 付録4 ハンドブック、付録5 規程サンプル
機器とサービスの一覧 機器、OSの版、クラウド、管理者 付録6 資産管理台帳
事故時の手順と連絡先 誰が判断し、誰に連絡するか 付録8 インシデント対応の手引き
SECURITY ACTIONの宣言 一つ星か二つ星の宣言の控え IPAの申込ページ
外部の認証や契約の写し ISMS、Pマーク、お助け隊、保守の契約など 各社の資料
記録 教育の実施日、バックアップと復元の試験、更新の点検 自社の簡単な表で十分

IPAによると、ガイドライン付録5は第4.0版で★3・★4の要求事項に対応する形に見直されました。これからルールを作るなら、このサンプルから始めると、のちの評価制度にもつなげやすくなります。

一方で、ネットワークの図や脆弱性の情報は、外に出すと攻撃の手がかりにもなります。秘密保持契約があるか、どこまで出す必要があるかを先に聞きましょう。★3の要求事項にも、自社の機密情報の取扱い方法を共有先との間で明確にすることが入っています。社内の基本は中小企業のセキュリティ対策の最低限にまとめました。

08誰が答えるか:4つの役割に分ける

1窓口

やり取りと期限の管理

2技術の確認

設定と機器を調べる

3業務の確認

現場の扱いを確かめる

4決裁

読んで承認する

専任者がいなくても回せます。大事なのは、1人に全部を任せないことです。IPAのガイドラインも、対策は経営者が主導するものとしています。

役割 担当の例 やること
窓口 総務、営業の担当者 取引先とのやり取り、期限の管理、回答の控え
技術の確認 パソコンに詳しい社員、保守会社 設定と機器の状態を調べる
業務の確認 現場の責任者 持ち出し、紙の管理、預かった情報の扱いを確かめる
決裁 社長、担当役員 内容を読んで承認する。費用と予定日を決める

社長の承認を形だけにしないでください。シートに書くのは会社としての約束です。解説資料でも、公正取引委員会と経済産業省は、セキュリティ対策は経営者が責務として行うものと説明しています。営業の担当者が取引を急いで、確かめずに全部「はい」と答えるのは避けましょう。

社内で答えられないときは、外の専門家に頼れます。IPAの「中小企業向けサイバーセキュリティ対策支援者リスト」は、中小企業の支援ができる情報処理安全確保支援士を載せた一覧です。図鑑のコンサル・体制づくりや取引先から対策を求められたからも探せます。

09保守会社やクラウド事業者に聞くこと

自社で分からない項目の多くは、業者が知っています。次の内容を文書でもらえば、シートの多くが埋まります。

  • パソコンとネットワーク機器の一覧、OSの版、保守の期限
  • ウイルス対策の状況、更新の方法
  • ルーターやUTM、VPN機器の設定と、更新の担当
  • バックアップの方法、保存先、復元の試験の有無
  • クラウドの管理者、多要素認証の設定状況
  • 事故のときの連絡先と、対応の範囲(契約に入っているか)

クラウドサービスの運用そのものは事業者の担当でも、設定やアカウントの管理は自社の担当です。「クラウドだから全部大丈夫」と書かず、事業者の公開資料を添え、自社の設定は自社の状態で答えます。さらに別の会社へ再委託している業務があれば、その会社の扱いも聞かれることがあります。SCS評価制度の考え方でも、再委託先は直接の委託先を通じて必要に応じて管理することが想定されています。

保守会社がない会社は、パソコンの販売店やルーターの契約先、クラウドの管理画面から順に調べます。それでも分からない項目は「不明」のまま出さず、「◯月までに調査します」と書いて、外部の専門家への相談も考えましょう。業者への質問と回答は、次のシートのためにフォルダへ残しておきます。

10提出までの流れ:1週間の目安

  1. 1日目:依頼内容を聞き、窓口と決裁者を決める。
  2. 2日目:シートを型ごとに分け、社内、保守会社、現場に振り分ける。
  3. 3〜4日目:設定画面と資料を見て答えを埋める。保守会社に質問を送る。
  4. 5日目:「一部実施」「未実施」の項目に、手当てと予定を書く。
  5. 6日目:費用がかかる予定を社長と決める。必要なら取引先に相談を入れる。
  6. 7日目:社長が読んで承認し、提出する。控えを保存する。

提出のメールには、回答日、答えた範囲(全社か一部か)、回答者の部署、質問への窓口を書き添えます。たとえば「全社を対象に、2026年11月時点の状況を回答しました。未実施の項目は備考に予定を記載しました。ご不明な点は総務の◯◯までお願いします」といった形です。時点と範囲を書いておけば、あとで状況が変わったときの説明が楽になります。

項目が多く間に合わないときは、黙って遅らせず、早めに途中経過を伝えます。この日数は図鑑の目安で、どの会社にも当てはまるものではありません。

11費用がかかる要請を受けたら:公取委と経産省の考え方

社長

「認証を取れ」と言われたけど、費用は全部うち持ち?

かかる費用は価格交渉の対象になり得ます。何にいくらかかるかを資料にして協議を申し入れ、合意は書面に残しましょう。困ったら公取委の窓口や取引かけこみ寺へ相談できます。

ハカセ

「有償のサービスを使え」「認証を取れ」と言われて、費用が全部自社の持ち出しになるのは苦しいものです。公正取引委員会と経済産業省が2022年10月28日に公表した文書は、取引先への対策の実施の要請そのものについて、直ちに独占禁止法上問題となるものではないとしています。一方で、方法や内容によっては優越的地位の濫用として問題になり得ると注意しています。この文書の「下請法」は、2026年1月1日の法改正で取適法(中小受託取引適正化法)になりました。

問題となるおそれがある行為 文書が挙げている例 受ける側の動き方
取引の対価の一方的な決定 有償サービスの利用や認証の取得を求めたのに、コスト上昇分の反映を明示的に協議せず、価格を据え置く かかる費用を出して協議を申し入れる
セキュリティ対策費の負担の要請 負担額や算出根拠が明確でない、または合理的な範囲を超えた負担を求める 金額と根拠を書面で求める
購入・利用の強制 同等以上の対策をしているのに、合理的な必要性なく指定の、より高価なサービスを使わせる 今の対策が同等以上であることを資料で示す

これらは、行為者の取引上の地位が相手より優越しており、相手が今後の取引への影響を懸念して受け入れざるを得ないことが前提です。自社の取引に当たるかは、個別の事情によります。迷ったら、下の相談先に聞いてください。

想定事例と解説も公開されています。発注側が説明会を開き、必要性や対策の方法、費用の考え方を説明する。受ける側は、IPAの教材やひな形で費用を抑え、お助け隊サービスと補助金を使う。そのうえで、かかった費用について価格交渉を申し入れ、合意した結果を双方が書面に残す、という流れです。解説によると、組織全体の対策にかかる費用は間接経費として計上されることが想定され、発注側は価格交渉の申出に応じる必要があります。交渉では、対策が自社の利益にもつながる点や、その発注側からの仕入割合などを勘案することが考えられる、とされています。

価格交渉は全額を相手に払ってもらう話ではありません。解説の考え方に沿って、何にいくらかかったかを資料にして、話し合いを始めましょう。結果は書面に残します。

12評価制度が始まると何が変わるのか

IPAが運営するSCS評価制度(サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度)は、委託元ごとにばらばらな要求に「共通のものさし」を示す仕組みです。★3・★4の受付は2027年3月に始まる予定です。★を取れば、発注側の要求に答えやすくなることが期待されています。今後は、シートの代わりに「★3を取っていますか」と聞かれる場面も出てくるかもしれません。

ただし、★の取得は任意で、取引の要件にするかは当事者が決めます。IPAのよくある質問によると、★の有無だけでなく、要求事項を共通のチェックリストとして使い、対策の実施状況を確かめることも想定されています。今のうちにSCS評価制度の料金と日程のニュースや用語の説明を読み、要求事項のExcelを自社の点検に使っておくと、シートへの回答にも役立ちます。

13無料でできる準備:シートが来る前にやること

  1. 図鑑のセキュリティレベル診断を受ける。18問で、6つの対策ごとの点数と先に直す3つが分かります。編集部が作った目安で、公的な評価ではありません。
  2. IPAの自社診断を付ける。25項目です。社内の数人で付けると、認識の差が見えます。
  3. 基本方針を作り、SECURITY ACTIONを宣言する。★一つ星は6か条に取り組むこと、★★二つ星は自社診断をして基本方針を定め、外部に公開することが条件です。
  4. 機器とサービスの一覧を作る。表計算ソフトの1枚で始めます。
  5. 回答の控えを残す場所を決める。次に来たシートは、前の回答から作れます。

SECURITY ACTIONは自己宣言で、IPAの認定ではありません。シートに書くときも「宣言しています」と書きます。自己宣言だけで足りるかは取引先によるので、実際の取り組みもあわせて説明しましょう。監視や駆け付けまで任せたいときはお助け隊サービスの一覧で比べられます。

14提出したあとに忘れやすいこと

  • 予定を守る。書いた期日の前に進み具合を見ます。遅れるなら、先に連絡します。
  • 状況が変わったら直す。大きな変更や事故があれば、前の回答が古くなります。多くのシートは定期的に更新を求められます。
  • 事故の連絡先を聞いておく。何かあったとき、取引先のどこに連絡するかを確かめます。
  • ファイルの送り方に気をつける。回答には社内の弱点が書かれています。送り先を見直し、指定があれば指定の方法で送ります。

15困ったときの相談先

相談先 こんなとき 連絡方法
公正取引委員会の相談窓口 要請の内容や価格交渉が、独占禁止法や取適法上問題にならないか知りたい 公正取引委員会の公式サイトの案内から
取引かけこみ寺(全国中小企業振興機関協会) 取引上の悩みを相談したい。相談は無料、匿名も可、全国48か所 公式サイトの案内から
IPA 企業組織向けサイバーセキュリティ相談窓口 セキュリティ事故の相談、連絡先に迷ったとき IPAの相談・届出窓口の一覧から
中小企業向けサイバーセキュリティ対策支援者リスト 規程づくりやリスク分析を手伝う専門家を探したい IPAのページから地域別に
お助け隊サービスの事業者 監視や駆け付けを頼みたい 図鑑の一覧から各社へ

16よくある質問

Q「未実施」と書くと取引を切られますか?
A

一律には言えません。IPAは、評価制度の要求事項をすべて満たしていないことを理由に、直ちに取引停止等が求められるものではないと説明しています。取引の要件は当事者同士で決まるので、その項目が条件なのかを聞いて、予定とあわせて話し合いましょう。

Qチェックシートに決まった様式はありますか?
A

国が定めた共通の様式は、確かめた範囲ではありません。各社が独自に作っています。自動車業界のように業界共通の基準がある分野もあります。今後は、SCS評価制度の要求事項が共通の物差しとして使われることが想定されています。

Q無料で答えていいのですか?費用は請求できますか?
A

回答の作業そのものに費用を請求できるかは、契約と話し合いによります。要請を受けて機器やサービスを入れた費用は、価格交渉の対象になり得ると公正取引委員会と経済産業省が説明しています。何にいくらかかったかを残しておきましょう。

Q取引先が指定するサービスを使わないといけませんか?
A

合理的な必要性がないのに指定の商品やサービスの利用を強制することは、独占禁止法上問題となるとされています。同等以上の対策ができているなら、その資料を示して相談してください。取引の事情によるので、判断に迷えば相談窓口へ。

Q従業員が数人の会社でも答える必要がありますか?
A

取引先に頼まれたら、規模にかかわらず答えを求められることがあります。人数が少なければ「全社で実施」と言いやすい項目もあります。実情に合わないルールを無理に作らず、今の状態を正直に書き、IPAの6か条から整えていきましょう。

Qチェックシートの回答を代行業者に任せてもいいですか?
A

調査や下書きを手伝ってもらうことはできます。ただし、答えの責任は自社にあります。最後は社内の実態と合っているかを確かめ、経営者が承認してください。「代行すれば必ず通る」といった売り込みには注意しましょう。

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出典(一次資料)17件被害を受けた組織や公的機関の発表だけを出典にしています(2026.11.02に確認)開く
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